田植え | 人はモロイかオモロイか?

田植え

小学校の帰り道は、田圃の中を通っていた。
ある日、田植えをしていた。
そのころはまだ機械は珍しくて、玉の付いた長い紐を田んぼの端から端まで伸ばして、人が並んで植えていた。
何もない田んぼで人の手がリズミカルに動いて苗を植えていき、すぐに紐が動かされて次の列にかかる、そして田んぼが苗で埋まっていくのが楽しかったんだと思う。
ずっと、ずっと、一人で見ていた。最後まで見たかったけど、心配した母親が学校まで探しに来て、途中で私を見つけて連れて帰った。
3時間ぐらい畦で立ったまま見ていたらしい。
足が疲れてしまっていたので、割に素直に帰った気がする。
次の日の朝、隣の田んぼまで苗は植わっていて、もう田植えはそこでは見られなかった。
それからも、田植えがあるとそこで立ち止まってしまうので、田植え見るの禁止を言い渡された。
でも、だんだん田植機が増えて、大好きな風景が無くなったから田植えに引っかかって行方不明になることはなくなった。

45分間の授業はおろか、朝の会の10分間でもじっと座ってられないし、朝礼なんて、先生の話を聞かずに足でお絵かきをしていないと収まらなかった自分が、なんで3時間も突っ立って田植えに見入っていたのかと、今でも母親に笑われる。

でも、なんでか、好きだったんだなー。